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 これはエッセイ風の習作をフェルデンものに改造した妄想です。
初めて作ってみたものですが、どうでしょうか?
 苦情・いちゃもんはご遠慮なくどうぞ。
 ちなみに、フェルデン嬢のしゃべりはドラマに準じて(というか
個人的な趣味で)「です・ます」調となっています。あと、並木道
のモデルはうちの学校だったりします。

 では、一味違ったエーベをお楽しみ下さい。

 以下、妄想本文


GaruGonの妄想01
「並木道で…」−フェルデンが感じたこと−


 トリフェルズの初夏。
 去年よりも強い日差しが、歴史のある町並みを照らしています。
まだ6月だというのに、すっかり夏の気候になっています。一体、
どうしたのでしょう?
 この学園に来たときは、6月といえば、まだ過ごしやすい日があ
ったような気がします。

 みんなに言わせれば、わたしは図書館の主だそうですけど、それ
は、確かにわたしは本は大好きですし、暇があれば図書館に通って
ますけど、でも、時々お散歩しながら、風の音、鳥の声、木々の緑
を楽しんだりしているんです。初等部の頃は、よく学園の裏の森を
お散歩して、森の空気を胸いっぱいに吸い込んだりしていました。
その帰り道には、コーやユーロスに会って、森の植物や動物のこと
を教えてもらいました。
 それから、時々森の中でカステルの歌声を聞きますけど、木陰に
腰を下ろして彼女の歌声を聞いていると、不思議と心が落ちついて、
まるで森と一つになったような感じさえするんです。
 わたしの一番のお気に入りは、寮から学園へと続く並木道です。
春には枝の先に新しい芽が吹き、夏にはその芽が立派に葉をつけて、
わたしたちを強い夏の日差しから守ってくれます。秋には色づいた
葉が、まるで絨毯のように道に降り積もって、冬は裸の樹が寒そう
に北風に震えています。
 四季それぞれに、それぞれの姿でわたしたちを見守ってくれる並
木たち。わたしはそんな並木道を通るのが大好きです。そして、そ
の並木を見るのも。
 とても初夏とも思えないほど暑い、6月のある日、わたしは不思
議なことに気づきました。夏はいつもそうしてくれるように、並木
道の木々たちは、その枝いっぱいの葉っぱでわたしたちを日差しか
ら守っています。そんな木々たちが作り出す自然の日陰の下で、わ
たしの眼に幹の姿が入ってきました。日陰を生み出してくれる枝と
葉っぱを支えている太い幹です。とても堅くて強い幹。でも、どう
したんでしょう、その日だけは幹に堅さと強さではなく、柔らかさ
と優しさを見ました。ただの柔らかさと優しさではなく、そう、ま
るでお母さんのように、やさしく包み込んでくれるような感じ…。
お母さんがわたしたちをやさしく抱くように、木々もわたしたちを
日差しから守ってくれているようです。
 唐突にわたしの頭に浮かんできた言葉は「生命」でした。
 木は生きているんです。今さら言う事でもないかもしれませんが、
生きているんです。その生命の力で、わたしたちと同じように毎日
を生きているんです。今も、日差しからわたしたちを守ってくれて
います。わたしたちが「生命」であるのと同じように、いえ、もし
かしたらそれ以上に、木々も「生命」である−。
 そんな一見当たり前のことが、わたしの頭の中を駆け巡りました。
優しさ−感情を持っているのはわたしたち人間だけじゃない、生命
の全てが人間と同じように、喜び、慈しみ、悲しみ、そして怒りを
持っている。全ての生命が自分だけじゃなくて、自分以外の生命に
やさしくしたいと望んでいる。
 わたしはそう感じました。

 傍から見れば、当たり前のことを、もしかしたら、ものすごくひ
とりよがりなことを繰り返しているように見えるかもしれませんが、
でも、わたしはこんな風に感じられてよかったと思っています。だ
って、そうすれば「人間と自然」という、ある意味ステレオタイプ
な構図を崩すことができます。大人の人が言うような、人間は自然
と敵対する存在ではないと思うんです。自然も人間も同じ「生命」
なんですから。人間は、このワーランドという世界に存在する「生
命」の一つなんだと思います。そして、並木道の木々も、森のたく
さんの樹木も、森に住む可愛らしい動物たちも、それぞれ「生命」
の一つなんです。
 わたしは、コーやほど外を出歩いているわけではありませんが、
それでもみんなが思っているほど、閉じこもって生活しているわけ
じゃないんですよ。わたし、本と同じくらい自然が好きです。だか
ら、今の気候が昔と違っていることには気づいています。そして、
このまま気候が変わっていけば、いつかはこの自然も姿を変えてし
まうということも、本から得た知識と、わたしの、はっきりとはし
ないけれど、感覚でわかっています。そして、気候を変えている原
因が、わたしたち人間にもあるということも知っています。

 …わたしたちは、並木道の木々と同じように、他の「生命」に優
しくできるでしょうか?
 わたしは、大好きな自然を守ることができるのでしょうか?


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