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新しい家族


XX月xx日 はれ。

 今日、新しい家族が増えた。
 テュラ・サバお姉ちゃんは、物静かでいつも落ち着いていて、とてもおっとりした人に見える。でもそんな見かけに見合わず、何でもテキパキとこなすのは、すごいと思う。Pentium!!!家といえば、Pentium4家に取って代わられて今はもう没落したと言われているけど、テュラ・サバお姉ちゃんを見てると、とてもそんな風には見えない。お父さんにそう言ったら、
「テュラ・サバはPentium!!!家の最後の世代として、特別な教育を受けたんだ。サバっていう名前がその証なんだよ」
 そう言って、お父さんは少し悲しそうに笑った。
 今はもうPentium4家の天下だけど、ちゃんとPentium!!!家の、テュラ・サバの良さを分かってくれる人も大勢いるんだよ、とお父さんは僕の頭を撫でた。
 テュラ・サバお姉ちゃんは、とても静かで、やさしくて、落ち着いている。Pentium4家の人たちも決して嫌いじゃないけど、穏やかな春の空に干したお布団のようなお姉ちゃんの方がずっと好きだ。テュラ・サバお姉ちゃんにそう言ったら、お父さんと同じようにちょっとだけ悲しそうに笑った後、お母さんみたいにふわっと抱きしめてくれた。
「そう言ってくれる人がいるから、わたしは頑張れるのよ」
 やさしくて、でもとっても強いテュラ・サバお姉ちゃんと、いつまでも一緒にいたいなと思った。

 もうひとり増えた家族は、ラデオン9600。少しほっそりして頼りなさ気に見えるけど、それだけにラデオン一族の特徴である真紅の瞳がすごく印象的な子だ。ラデオン一族でも一番小柄なんだそうだけど、お絵描きはすごく上手で、綺麗な暖か味のある絵を描いてくれる。新しいDX9画法にも通じていて、立体造形もなかなかのものだ。彼女のお姉さんたちに比べるとまだまだだって言うけど、僕はラデオンの絵がすごく好きだ。そう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「筆が変わるとすぐ下手になっちゃうんだ…でも、お兄ちゃんにそう言ってもらえると嬉しいよ」
 お父さんは、本当はぱふぃりあさんの妹を呼ぶつもりだったらしい。
「Matrox家とはG200以来の付き合いだから、できればぱふぃりあ達を呼びたいんだよ」
 ラデオンが来ることに決まる前、お父さんはよくそう言っていた。お父さんは、G400さま以降、凋落の兆しが見えたMatrox千年王国のことをいつも心配していた。色々な事情があって今回はラデオンになったようだけど、でも、いつかはぱふぃりあさん達を呼びたいと、今でも思っているみたいだ。
 そのことを、ラデオンも知っている様子だけど、口に出しては何も言わない。何気なく聞いてみたら、
「…テュラ・サバお姉ちゃんやライブお姉ちゃんがいて、お父さんがいて、そして…大好きなお兄ちゃんに会えた。わたしにはそれで十分なんだよ」
 紅い瞳を微かに潤ませてそう答えたラデオンを、僕は思わず抱きしめていた。ひんやりしたほっぺと、背中に回された暖かい手を感じて、この子の兄になれて本当に良かったと思った。

06/07/2003初稿
19/08/2003改訂
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