新  た  な  出   逢   い   2001/08/07
       
出入りのPC会社の営業マンからインターネットという言葉を聞いたのは5年ぐらい前だろうか。
それまではパソコン通信を介してデータのやり取りをしていたが、今では簡単にメールで通信が
出来るようになり、誰でも気軽にHomePageを開ける様になった。

自分のPCを持ちインターネットに接続して一年になるこの夏、そのHomePageが縁で、どちらかといえば、引っ込み思案の私が、大胆にもネット上で知り合いになった人達との「オフ会」に出席してみようと思いたった。もっとも姪が出席すると知っていたし、集うメンバーのHomePageを訪問して記事や掲示板での発言から、それとなくそれぞれの思想や感性が好もしく感じられていたので、初対面の不安は無かった。もっとも何の取り得も無い自分をさらすのが、ちょっぴり恥ずかしかったけれど。

ネット上の発言等からイメージしていた人達の実像に触れる瞬間の緊張感は、体験した事の無い不思議な
感動だった。頭の中にあったぼーっとしていたものが、いきなり目の前に形として現われたのだ。
私の中でそれぞれの方のイメージが、実像の中にすーと自然に溶け込んでいった。

新宿の高層ビル49階の会場で、おおいに飲み、食べ、話に花を咲かせ、楽しい時間は瞬く間に過ぎていった。それぞれのサイトを基地としてノンフィクション、小説、和歌、俳句、写真等様々な情報や、知識の発信者が私の目の前にいる人達なのだ。世代も、職業も、居住地も異なる人々が、電波によって結びばれて、オフ会に集い、親交を深めるという昨年までの私には思いもよらなかった事を体験しているのだと、年がいも無く興奮を覚えた。

オフ初日に、新橋、銀座方面へ出かけたのだが、銀ブラをしたのは娘時代からこっち久しい事で、結婚、育児に追われた煩雑な生活が一段落して今再び青春が訪れたような、若やいだ気分を味わった。
オフ2日目に現在日本一土地の価格が上昇中という麻布十番を訪れた際に、古くて擦り切れた元祖鯛焼き屋の暖簾をくぐり、アツアツの鯛焼きを食べた。神棚を祭った古風な店内の様子や前掛け姿の職人さんの姿を見ていて、昔実家が田舎で今川焼きをしていた頃、型に生地を注ぐ時の母の手許がチラッと頭をよぎった。新しいもの好きの母が生きていたらインターネットにもきっと興味を示したろうに。
この後に浅草へ出かけて浅草寺に参詣したが、浅草は子供の頃福島の田舎から両親に連れられて上京してはじめに訪れた所で、花屋敷の回転木馬に乗ったセーラー服姿の写真の事など懐かしく思いだされた。

上野駅で私だけ地下鉄の路線が別になるのでとあっけない別れとなった。
これまでも様々な人と出会い、親しんで来たけれど、意外と深いところでの会話は少なかった様に思う。
今回のオフ会でも他愛のない話で盛り上がっていたけれど、ネット上で、それぞれの方の作品を通して
人となりに親しんでいたせいか、旧知の仲のような錯覚に陥っていた。それは不思議な感覚であった。

信長が良く口ずさんだという「人生僅か50年」は、数年前に越えてしまった私に、新たな楽しい世界が開けるとは一年前には想像もしていなかった。ただ昨年何気なくめくった雑誌の星占いに、新しい趣味を持つ事になると書いてあって、確実に老いに向っていく寂しさを感じ初めていた時だったので、あても無いのに期待に胸がときめいて、なぜかその時から何か得られるような気がしていた。それがインターネットで実現したのだから不思議だ。こうして新たに出逢った人々と進歩的な交際を始めたのに、それと共に遠い記憶をも呼び覚ます旅に今出発したような思いがしている。

この機会を与えてくれた姪を始め、温かく仲間に受け入れて下さった方々に深く感謝致します。m(__)m
















 

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