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日本経済新聞出版社
2008
 2003年からの3年間、車上生活をしつつ日本各地の石1000カ所を巡った“イワクラ写真家”須田郡司氏の豊饒な旅の記録。本書で紹介されているのは、このうちの50余カ所。選定にはさぞや難渋されたことだろう。

 造本は、最近ではあまり見られなくなった「小B6判上製」。新書判を数ミリ大きくしたサイズで、片手にしっくりと馴染み、旅に携行するにはぴったりのサイズ。「聖なる石」の格好の案内の書となっている。

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 氏の石(聖地)に対する情熱は、どうやら桁外れであるらしい。そもそも石との出会いは沖縄本島南部の斎場御嶽(せいふぁうたき)であったという。その時の衝撃がすさまじく、以来約20年間にわたり世界の「聖なる場所」を遍歴・踏査している。
 氏は日本石巡礼にジンバブエの民族楽器「ムビラ」を携えて、石の前で音を奏でる。「すると、ムビラの音を通して、石とのコミュニケーションが成立したような、不思議な気分になる時があった。まるで地球の記憶を持つ石の声が聞こえてくるかのようであった。」という。
 古代、神下ろしのために和琴を弾く審神者(さにわ)の姿と重なってくる。

 ここ数年、神社などの巡礼ブームが起こっているらしい。石巡礼は、神社発生以前の日本宗教のルーツを探るキーポイントになるものである。『日本石巡礼』の続編を期待したい。
 現在、氏は「石の語りべ(スライド&トーク)」の活動を行っている。もはや忘れられ回復しようがないとおぼしい石の声を伝えていきたいという。詳しくは氏のホームページ「須田郡司 Official Website」

◎以下は目次◎◎
一 石に呼ばれて
セイファウタキの衝撃【沖縄県南城市】/世界の聖地に魅せられる/石を求めて/「石の上にも三年」計画

二 祀られる石たち
ゴトビキ岩【和歌山県新宮市)/石神様【青森県青森市入内】/太田権現【北海道せたな町】/鵜戸神社【宮崎県日南市】/おたどころの石【宮崎県西都市】/石割山 【山梨県山中湖村】/岩神様の揺るぎ石【岡山県赤磐市】/太郎坊【滋賀県東近江市】/石仏山【石川県能登町】/琴弾山【島根県飯南町】/宮村岩部神社のご神体【石川県加賀市】 /三国岩【兵庫県神戸市】/二つ岩権現【新潟県佐渡市】/米神山【大分県宇佐市】/船石【奈良県平群町】/丸石神【山梨県山梨市】/天道法師の墓【長崎県対馬市】/丹内山神社の巨石【岩手県花巻市東和町】/赤城山の櫃石 【群馬県前橋市】

三 奇石怪石の景勝
太刀割石【茨城県日立市】/桃太郎岩【三重県御浜町片川】/年輪石【沖縄県石垣市】/人面岩【群馬県沼田市・新潟県佐渡市】/一枚岩【和歌山県古座川市】/橋杭岩【和歌山県串本町】/三つ岩【岐阜県高山市】/親子熊岩【北海道せたな町】/地蔵岩【三重県菰野町】/仏ケ浦【青森県佐井村】/万治の石仏【長野県下諏訪町】

四 巨石の磊
巨石パーク【佐賀県佐賀市】/足摺半島の巨石群/矢岳ドルメン【熊本県上天草市】/飯野町の巨石【福島県福島市飯野町】/名草巨石群【栃木県足利市】

五 石の物語
日室ケ獄・岩神さん【京都府福知山市】/不動岩【熊本県山鹿市蒲生】/石の塔【青森県大鰐町】/壱年峰【山形県米沢市長手】/釣石神社【宮城県石巻市北上町】/遙拝石【高知県梼原町】/石化伝承/鳥羽 石神さん【三重県鳥羽市相差】/天草・牛深の石神【熊本県天草市】/カムイ岩・立神岩【北海道積丹町・鹿児島県枕崎市】/川を上がる丸石【高知県馬路村】/大岩大権現【福井県敦賀市】/夫婦岩【福岡県黒木町・三重県伊勢市二見町・福岡県志摩町】/しあわせ祈願所【山口県周防大島町】/帯岩【沖縄県宮古島市】/動かしてはいけない岩 【沖縄県宮古島市】

六 新しい石の聖地
新城さんの石庭【沖縄県宮古島市】/北代庭園「アネモス」【高知県土佐清水市】

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『日本石巡礼』 須田郡司[著] 日本経済新聞出版社(2008)