高さ12.5m、周囲25m、人工物を思わせる整った形状。メンヒルとしては最大級ではないだろうか。
宮城県の最南端、丸森町にある老桜「
筆甫の親王桜
」を調べていて、同町泉地区に「立石」と呼ばれる巨石があることを知った。町のホームページにも天然記念物として記載されている。現地に行けば、簡単に見つかるだろうと思ったがこれが大まちがい。このあたりと思うところを走り回るが「立石」の看板は一向に見つからない。町の中心部に引き返し交番で訪ねてみたが、ここでも確かな情報は得られない。探しあぐねること1時間余。羽入集落の舗装の切れた車1台がやっと通れる林道で、『立石』と書かれた錆びた道標を見つける。
付近に駐車場はない。途中の火薬庫ゲート前に車を置いて、山道を約15分歩く。急な坂道をのぼりつめた、開かれた視野の先に巨石の頭が見えてきた。
均整のとれた姿形は何かの石碑のようであり人工物を思わせるが、数百トンはあるだろうこの巨石をここまで運び上げることはまず不可能だろう。
ここで思い出すのは、記紀神話の黄泉比良坂の物語に出てくる「千引きの岩」である。イザナギが黄泉の国からの脱出の際、千人で曳くほどの大きな岩で境界を塞ぎ、イザナミの追跡を逃れたという磐石のことである。
この「千引きの岩」が「塞の神(さえのかみ)」の信仰に基づく原典とされている。この立石も岩の霊力で悪霊や災難の侵入を防ぐ、道祖神や石敢当(いしがんとう)のような「遮止」の役割は担っていたのではないだろうか。
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現地には案内板がない。後日、丸森町役場からFAXでいただいた資料は以下の通り。
立石
天然記念物 昭和41.10.5 指定
丸森町字泉72の1
【由来】
丸森町の中心街から東南東約2kmの山の中腹にそびえ立ち、その高さ12.5m、周囲25mの大石である。その昔、阿倍貞任(1050ころ)が石上に立ったと言い伝えられるほど、以前から人々に注目されてきたものである。
この巨大な石に対して、人々が何か信仰の対象にしたとも考えられ、石のまわりに、弥生式土器の破片や年代不明の貨幣などが発見されている。
【現況】
丸森町羽入東の峰上にある柱状花崗岩である。 巨大な岩石のため、筆甫街道上滝に至るまで、見る場所によってその姿を変え異様な感じを人々に与えている。
【交通】
国鉄バス 相馬線 新橋停留所下車 徒歩30分
宮城交通バス 肱曲線 五福谷停留所下車 徒歩40分
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2006年5月3日撮影
急勾配の坂道の先に巨石の頭がのぞかせている。
角度により見え方がまったく異なる。
右手に阿武隈川の流れる丸森町中心部が見渡せる。
峰上にある「立石」。遠目には巨大な石碑に見える。