天手力男命(あめのたぢからおのみこと)がこじ開けたといわれる天の岩戸神話に由来する石割権現。


天戸岩が「石」の字に似て割れていることから、石割神社の名がついたといわれる。

 富士山の北東、山中湖畔に近い標高1,413mの石割山。その八合目に石割神社がある。今では富士山を仰ぎ、山中湖を見下ろす人気のハイキング・コースとなっているが、かつては女人禁制の修験道の霊場であったという。
 ご神体は、天の岩戸神話で天手力男命(あめのたぢからおのみこと)がこじ開けたという伝承をもつ大岩。高さ10m、横15m。後方の山肌とは約60cmの垂直な隙間で切り離されている。
 天岩戸の表・裏面ともに、凹凸のないきれいな平面で、垂直にそそり立つ様は、自然がつくる奇岩というより、人工的につくられた巨大なモノリスのように見える。

 天戸岩は花崗岩の板状節理によって生じた偶然の産物なのだろうが、これを見るものは「何だ、これは?」という不思議の感を抱く。現代ではこのような加工もさほど難しくはないのだろうが、古代であれば、いや200年、100年前の人間であっても、人智を越えた神の技が内包されていると感じただろう。大岩の前に建てられた祠と巨石に巻かれたりっぱな注連縄がその証だ。

 山の中の自然石そのものを神として崇拝する心性、これは神道に特徴的な思想で、神社の原始形態と考えられている。石が単なる無機物ではなく、精霊や神の宿る磐座(いわくら)・磐境(いわさか)と称され信仰されているのは、縄文時代のアニミズムが今に至るまで連綿と横たわっているからであろう。ここ石割神社もこうした磐座・磐境の典型的な聖域の一つである。

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2007年3月15日撮影


巨石の裏側。 幅約60cmの隙間があり、
その間を時計回りに3回通ると運が開けるという。


石割神社に至る一直線に伸びる階段。350段以上あるという。


【案内板】途中のあずまやにも案内板がある。内容は以下の通り。

石割神社縁起

創 立 住吉、詳ならず
    素戔鳴命、天千力男命、武甕槌命、岩長姫命、日本武命
大祭日 四月九日(旧三月九日)
小祭日 毎月九日
起 縁 伝承によれば、住吉神の使の白鳩の導きにより、石割山に創始せらる、霊験あらたかな
    権現様として平野の郷人をはじめ近郷近在の崇敬者の信仰をあつめ現在に至っている。
御利益 開運、産業、医薬、悪疫防除、息災長寿等の神として信仰さる。

大天狗、小天狗
 天戸岩、お釜石、乗鞍石の奇石が伝説を伝えている。登山家は一度は必ず石割の御山に登り、天戸岩の石の字に割れている天戸開きの割れ戸を通り、三度拝むことにより好運が開け、又割れ目から滴り落ちるしずくは霊水として、皮膚や眼病、イボなどを治療する特効があると云われている。又霊水を飲むと無病息災長寿を保つことが出来ると伝承されている。
 昔から霊山として、蜃気楼が現れる山として、日本山岳史に記されている。