地元の鎮守さまとして親しまれる丸山神社入口。


民家の側から見た「鮒岩」。台座の岩棚にバランスよく乗っかっている。


顔部にある小さな窪みが、クジラの眼に見えてくる。


境内側から見た「鮒岩」。中津川市の天然記念物に指定されている。


境内にあるお稲荷さんの参道、右にあるのが「鮒岩」。


お山の長径は約130m。二階建て民家の屋根右部分に「鮒岩」が見える。
 中津川市苗木、国道257号沿いのスーパー「バロー」の裏手方向、約400mの田んぼの先に、お椀を伏せたようなかたちのこんもりとしたお山が見える。山というにはあまりにかわいらしいが、その頂上に丸山神社本殿があり、お山の中腹に市天然記念物の奇岩「鮒岩(ふないわ)」がある。
 無住の神社のようだが、手水舎には柄杓とともにきれいな手ぬぐいまでが備えられ、境内は隅々まで掃き清められていて清々しい。
 丸山神社が、土地の氏神や産土神を祀る“鎮守さま”として、村人の精神的よりどころとして大切にされていることが、境内の佇まいからうかがえる。無垢の清浄こそが、何よりも人の心を和ませれてくれる。

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 鮒岩の全長は約7m、幅、高さともに約5m。推定重量は200トン。尾っぽが跳ねあがったフナのかたちといわれるが、私には堂々とした重量級の巨体と顔部にある小さな窪みが、愛らしい眼をもったクジラに見えてしまうのだが。
 フナか、クジラか……。
 名前の由来は、形状だけによるものではないらしい。案内板によると
「日本民族文化保存会吉田吉氏の話しによれば、昔から神に供える魚は鮒であって、刀の柄の飾にも鮒が用いられたという。また熱田神宮の市始の即ち商売始めのお祭りには、掛鮒の御神事というのがあって、掛鮒というのは大ビル(ねぎ)五本と二匹の鮒を麻で二方に結び分けたもので商売繁盛を願うもので、鮒と神とは何等かの関係ある」
 と記されている。
 フナの骨は縄文遺跡からも出土しており、昔から身近な魚として日本人に親しまれていた。口ひげをもつコイが勇者の代表とされるのに対し、ひげのないフナは弱者あつかいされ「鮒ざむらい」などの言葉もある。
 結局、鮒と神との何等かの関係については、よく分からないが、身近な魚の代表として鮒の名が用いられたのではないだろうか。

 また、鮒岩についての古記録、伝承の類もまったく残されていないという。
 これについては、古くは鮒岩が、丸山神社の磐境(いわさか)であったものが、時代とともにその意味が忘れられ、特異な形状をした奇岩としての印象だけが際だって、謎の巨石として伝播されるに到ったと思われる。

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2008年11月03日撮影

丸山神社本殿は石段を上った先の頂上にある。


丸山神社拝殿。


拝殿に飾ってある大蛇(上部)。
巳年の人が奉納したもので松かさでできている。


【案内板】