▲中央の巨石が「前立磐」。右の「後立磐」とほぼ20cmの隙間をおいて平行に並ぶ。


▲手前から「後立磐」「前立磐」「前伏磐」拝所と並ぶ。水木しげるの漫画に登場する「ぬりかべ」のようだ。
 桜行脚のおまけに、地元の方の案内で予定になかった巨石を訪ねることができた。
 標高330m。鬱蒼とした杉林の中、鳥居をくぐり参道に入る。右手には数mもあるだろう、角がとれ丸くなった巨岩がゴロゴロと転がっている。ここが万年渓と呼ばれる渓谷と教えられる。地名も柳生町岩戸谷。天岩戸伝説に由来する巨石信仰の聖地である。

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 天乃石立(あめのいわたて)神社は、延喜式神名帳にも記載される平安時代より知られた古社。ご神体は4つの巨大な花崗岩石である。
(1)「きんちゃく岩」日向神社―天照大御神
(2)「前伏磐」天立神社―天盤戸別命(あまのいわとわけのみこと)
(3)「前立磐」天石立神社―豊盤門戸命(とわいわかどのみこと)
(4)「後立磐」天石吸神社―櫛盤門戸命(くしいわかどのみこと)
 とりわけ目をひくのは、大きな放物線を描き、天空から落ちてきたかのように地面に突きささる「前立磐」「後立磐」の2枚の巨大な立岩。自然のものとも人工のものともつかぬ、まさに神業である。


▲拝所と「きんちゃく岩」。


▲前立磐の前に友人に立ってもらい大きさを目測する。
案内板には高さ6m、幅7.3m、厚さ1.2mとある。
手前の「前伏磐」は、高さ1.2m、幅7m、厚さ1.2m。

▲急な斜面に友人が登り、25mmのレンズで撮影。カメラを構えているのが当サイトの管理人。


【案内板】

▲一刀石。約8m×7m、高さは約2m。
 中央で真っ二つに割れた一刀石を見て、すぐに盛岡の石割桜が頭に浮かぶ。石割桜も一刀石と同じ饅頭形の花崗岩で、落雷により割れたわずかな隙間に桜の種子が落ち、育ったものといわれている。
 一刀石は雷ではなく、柳生新陰流の開祖 柳生石舟斎宗厳(せきしゅうさいむねよし)が修行中に、天狗と見まがい、一刀のもとに両断したという。
 どちらの亀裂も、石工たちのいう「石の目」によるものだろう。岩石には節理とよばれる潜在的に割れやすい目が一方向にあり、この方向に亀裂が入りやすい。
 柳生石舟斎の刀が、この「石の目」をみごと射抜いたという可能性もないではない。
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2004年4月7日撮影

【案内板】