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◎12/27(金)晴天
「田園りぶらりあ」古書目録に 〈page 3〉を追加。
2013年も残すところあとわずか、年内の更新もこれが最後になります。
来年は6日(月曜日)から業務を開始します。
それでは、よいお年をお迎えください。
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◎12/22(日)晴天
今年6月に茨城県の大洗磯前神社を訪ねたが、その折、
酒列磯前(さかつらいそさき)神社にまで足を伸ばすことができなかった。
酒列神社と大洗神社は、神社創建の由来において深い関係にあり、
大洗だけの紹介では片手落ちとなってしまう。
再訪は年内に片付けておきたい思い、常陸国那賀郡に車を走らせる。
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◎12/21(土)晴天
土曜日、田園りぶらりあの店舗外観の写真を撮影する。
12月に入り、外壁塗装工事が行われていたので撮影を控えていた。
ついでに目録1ページを追加するための書籍選ぶ。これは年内にアップしたい。
田園りぶらりあの正月休みはの三か日のみとのこと。
◆『神道とは何か 神と仏の日本史』伊藤 聡 中公新書 を読む
古代から明治維新の神仏分離まで。1000年以上にわたる神仏習合を足跡を辿る。
先学の諸研究を省察しつつ、新書とは思えない中身の濃さで、
神道の変容ぶりを簡潔にまとめた好著。
◆『きのうの神さま』西川美和 ポプラ文庫 を読む
オダギリジョー、香川照之出演の「ゆれる」(2006)、
笑福亭鶴瓶、瑛太出演の「ディア・ドクター」(2009)。
ともに地味な人間ドラマだが、原案からストーリーへとまとめあげていく
シナリオの構成力には目をみはるものがあり感心させられた。
本作は「ディア・ドクター」(僻地医療を題材にした映画 )から派生した短編小説集。
映画監督のみならず、小説家としてもなみなみならぬ才気を感じさせる。
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◎12/15(日)初霜降りる
光陰矢の如し。今年も残すところあと半月となった。
◆『石の猿〈下〉』ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫 を読む
『ボーン・コレクター』ほどの驚きはないが、
それでも十分に読ませるところは、並の作家ではないのだろう。
◆『多生の縁』玄侑宗久対談集 文春文庫 を読む
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◎12/8(日)
5時起きして、静岡県富士宮市の山宮浅間神社に出かける。
天気予報では快晴だったが、到着すると富士山は雲に覆われまったく見えない。
ここでの撮影はあきらめて、浜松市の渭伊神社境内に鎮座する天白磐座遺跡に向かう。
こちらは曇天が幸いし、いい写真を撮ることができた。
帰路に牧之原市の子生まれ石。焼津市の石脇浅間神社に寄る。
◆『民俗宗教を学ぶ人のために』山折哲雄、川村邦光=編 世界思想社 を読む
◆『絢爛たる流離』松本清張 文春文庫 を読む
◆『石の猿〈上〉』ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫 を読む
〈リンカーン・ライム〉シリーズ第4弾。
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◎12/2(月)
「田園りぶらりあ」の古書目録をオープンしました。
(上記「田園りぶらりあの古書」をクリック)
店主の下正雄(しもまさお)さんは、神田神保町の老舗「大雲堂書店」に17年勤め、
昭和47年に独立。48年(1973)、現在の大田区田園調布に店を構え、
今年でちょうど40年になる。
田園調布といえばオシャレな店舗を想像されるかも知れないが、ここは昔ながらの古書店。
近年、昔ながらの街の古書店が「絶滅危惧種」となっていることは周知のとおり。
ブックオフやアマゾンの脅威にさらされて、
店売りだけじゃとてもやっていかれない時代になってきた。
薄利多売であっても、なんとかネットで全国に販路を広げ、
一日も長く、楽しい商売を続けていきたいと願っています。
これから徐々に目録のページ数を増やし、
「巨石と古書のコラボレーション」ならではの本選びを試みたいと思っています。
なにとぞ、奮って当サイトをご活用いただけますようお願い申しあげます。

◆『余多歩き 菊池山哉の人と学問』前田速夫 晶文社 を読む
前田氏の前著『異界歴程』(晶文社 2003)で知った、
在野の民俗学者・菊池山哉(きくちさんさい、明治23〜昭和41)の本格評伝。
戦後長くアカデミズムから黙殺されてきた異端の学者に光を当てた労作。
◆『神道の逆襲』菅野覚明 講談社現代新書 を読む
◆『源内なかま講』高橋克彦 文春文庫 を読む
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◎11/24(日)
土曜日、「田園りぶらりあ」で目録に載せる古書を選ぶ。
とりあえず40商品をセレクト。これを第1弾として来月初旬にアップする予定。
◆『日本神話の英雄たち』林 道義 文春新書 を読む
文末の(笑)には興ざめするが、
とっつきやすさ、分かりやすさには格別の配慮がなされている。
日本神話をユング心理学で読み解いていく本書の中で、
著者は河合隼雄氏の「中空構造論」を痛烈に批判している。
日本人の心のあり方に「中空均衡構造」が働いているという、
河合氏の考えは示唆に富むもので、私には面白かった。
林氏は、三神から二神への転換は、豊穣のシンボルである三の数字から、
二項対立の原理への転換を示すものであり、こうした変化には、
当時の自我意識の発達、あるいは父権的観念が背後に潜んでいるのであって、
決して「中空構造」などを示しているのではない。という。
痛烈な批判の割には、林氏の説も今ひとつピンとこない。
◆『雨にぬれても』上原 隆 幻冬舎アウトロー文庫 を読む
◆『死んだらどうなるの?』玄侑宗久 ちくまプリマー新書 を読む
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◎11/17(日)
「田園りぶらりあ」でホームページ用の写真撮影。
三島由紀夫全集 全36冊 月報揃美本 18,000円 安い!!
◆『友がみな我よりえらく見える日は』上原 隆 幻冬舎アウトロー文庫 を読む
◆『胸の中にて鳴る音あり』上原 隆 文春文庫 を読む
ごく普通の人から話を聞いて、それを極上のノンフィクションとして成立させる。
上原氏の書くノンフィクションは一篇が10頁余と短い。
削りに削られた文章は小学生でも読めると思えるほどに平易であり、
文章の呼吸も絶妙である。
演出されたセンチメンタリズムは微塵もないが、
読後にはジーンと熱いものがこみあげてくる。
殺伐とした現代を生き延びるための救いの書ともいえる。
へたな小説よりはるかに面白い。
◆『沈黙の画布』篠田節子 新潮文庫 を読む
筆力には感心するが、ストーリーは凡庸。今ひとつ楽しめなかった。
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◎11/11(月)東京で木枯らし1号
「田園りぶらりあ」の古書目録を、「巨石巡礼」に掲載しようとただいま計画中。
店主は「パソコン」も「ケータイ」も使えない。今さら覚える気もないという。
それでもインターネット販売には興味をそそられる。
現在、「五反田遊古会」から奇数月に発行される古書目録に毎号3頁出稿している。
この目録からの抜粋と、「巨石巡礼」ならではの視点で選んだ古書を集めて、
月1回程度の更新ではじめてみようと思う。
今風に言えば「巨石と古書のコラボレーション」というやつ。
年内にはスタートさせたい。乞うご期待。
◆『脳と魂』養老孟司×玄侑宗久 ちくま文庫 を読む
◆『室町少年倶楽部』山田風太郎 文春文庫 を再読
風太郎、なにしろ作品数が多いので、これまで何を読んだのか記憶がおぼつかない。
「アミダ籤」あたりで以前に読んだことを思い出すが、
これほどの傑作であったことも失念していた。「室町もの」を読み返してみよう。
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◎11/4(月)
◆『阿修羅』玄侑宗久 講談社文庫 を読む
一人の人間に複数の人格が現れる「解離性同一障害」(多重人格)をテーマとした作品。
人格の解離は、幼少期に受けた精神的ストレスや心的外傷(トラウマ)に起因するという。
心の深層(アーラヤ識)に分け入る治療のプロセスがていねいに描かれており、
心の闇の奥深さ、不思議さに感嘆させられる。
先月読んだ2作のテーマは「人は死んだらどうなるのか?」だった。
私は坊主にあまりいい印象をもっていないが、
玄侑師の描くテーマは興味深く、真正面から取り組む真摯な姿には共感できる。
◆『七つの金印』明石散人 講談社文庫 を読む
天明4年(1784)、博多湾の入口に浮かぶ志賀島(しかのしま)で
発見したされた「漢委奴国王印」の金印の謎に迫る。
博覧博識、とにかくよく調べられており、知識の取得力に感心する。
◆『神武天皇実在論』林房雄 学研M文庫 を読む
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◎10/28(月)
◆『鳥玄坊 ゼロから零へ』明石散人 講談社ノベルス を読む
◆『古代史謎解き紀行〈3〉九州邪馬台国編』関裕二 ポプラ社 を読む
◆『伊勢神宮と天皇の謎』武澤秀一 文春新書 を読む
古代からの姿をそのまま今に伝えている、といわれる式年遷宮の今昔を検証する。
前著『伊勢神宮の謎を解く』(ちくま新書)の続編となる好著。
かねてより、外宮の千木(ちぎ)が外削ぎで堅魚木(かつおぎ)が
9本(奇数)であることが不思議だった。この疑問に対し、
本書では中世以降、政治力、経済力において内宮を上回る勢いを見せた外宮が、
祭神である豊受大神を、天御中主神(あめのみなかのぬし)および
国常立神(くにとこたちのかみ)と同一神と見なして、男性神化を図り
「ぬかりなく、内削ぎであった千木を外削ぎとした……」という推論を展開している。
興味深い仮説と思うが、鎌倉時代以前には内削ぎであったことが確認できないので、
そのまま「なるほど!」とはうなずけない。
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◎10/21(月)
◆『 黒祠の島 』小野不由美 祥伝社文庫 を読む
黒祠とは淫祠と同意であるらしい。
それはいかがわしい神を祀ることであり、いわば邪教である。
タイトルにそそられて読んでみたが、残念、的外れだった。
◆『ハンニバル・ライジング 』(上)トマス・ハリス 新潮文庫 を読む
◆『ハンニバル・ライジング 』(下)トマス・ハリス 新潮文庫 を読む
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◎10/15(火)
◆『中陰の花 』玄侑宗久 文春文庫 を読む
◆『アミターバ 無量光明 』玄侑宗久 新潮文庫 を読む
著者は福島第一原発から西45キロ地点にある三春町の臨済宗福聚寺の住職である。
現在は政府の復興構想会議委員も務められ、東北復興に尽力されているとのこと。
福聚寺には樹齢470年といわれる枝垂桜があり、
10年以上前になるが一度訪ねたことがある。
『中陰の花 』に収録されている「朝顔の音」を含めた3作ともに、
「人は死んだらどうなるのか?」がテーマになっている。
89歳の「おがみや」のウメさんが、自らの予知能力で自分の死期を予言する。
それを聞きつけた病院側は、
なんとしてもその日にだけは死なせるわけにはいかないと
「総力戦」の意気込みで延命治療をほどこす……。
この滑稽な物語の展開に引き込まれたが、
それ以降の物語には、尻すぼみの感があった。
『アミターバ 無量光明 』は、死を受け容れた「母」の体から、魂が離脱し、
病院のベットの上で、何本もの管につながれ、酸素マスクを被せられた自分の姿と、
心電図の水平に流れる緑の線を、上から冷静に見下ろしている。という、
解説の中沢新一いわく「日本人の死者の書」の物語。
私も昨年、同様の姿で母を亡くしているので、感じ入る部分は多々あるが、
文学としてのインパクトは、こちらも希薄であった。
◆『闇の奥 』辻原 登 文春文庫 を読む
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◎9/30(月)
◆『 償いの報酬 』ローレンス・ブロック 二見文庫 を読む
◆『伊賀忍法帳 』山田風太郎 講談社文庫 を再読
かつてハマった忍法帖シリーズ。数十年ぶりに再読。
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◎9/24(火)
◆『鳥玄坊 根源の謎 』明石散人 講談社文庫 を読む
◆『 視えずの魚 』明石散人 講談社文庫 を読む
◆『日本史鑑定 』明石散人/高橋克彦 徳間文庫 を読む
またまた遅まきながらの読後感だが、
博覧強記に支えられた明石氏の鋭い史眼には、目をみはるものがある。
余りの超絶さについていけない部分も多々あるが、
これも類のないエンターテインメントとして読めば十分楽しめる。
もう少し読んでみたい。
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◎9/17(火)
茨城県/千葉県「 要石(鹿島神宮/香取神宮) 」をアップ。
◆『 四国八十八カ所─わたしの遍路旅 』石川文洋 岩波新書 を読む
『日本縦断 徒歩の旅─65歳の挑戦』も読んだ。
今回は70歳での四国巡礼の旅である。
私も歩くことは好きだが、とてもマネはできない。
もはや石川文洋は、巡礼者にとっての憧れの人である。
次に計画しているという太平洋側日本縦断の旅を期待している。
◆『 斜光─昭和ミステリ秘宝 』泡坂妻夫 扶桑社文庫 を読む
◆『 神道を知る本 』別冊宝島編集部 宝島文庫 を読む
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◎9/9(月)
「福島から250キロ離れた東京は安全です」
「私たちは決して東京にダメージを与えるようなことは許しません」
「健康問題については、今までも、現在も、そして将来も! 全く問題はない!」
いまだ帰る故郷を失い、子どもたちの健康を気遣い暮らす福島の人々は、
どんな思いでこれら言葉を聞いたのか。都民であることが申し訳ない。
◆『殺しのパレード 』ローレンス・ブロック 二見文庫 を読む
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◎9/2(月)
◆『 蝦夷地別件(中)』船戸与一 小学館文庫 を読む
◆『 蝦夷地別件(下)』船戸与一 小学館文庫 を読む
シャクシャイン戦争から120年後の寛政元年 (1789)5月、
国後(クナシリ)島とその対岸の目梨(メナシ)で起きた
アイヌ民族の蜂起を題材とした歴史小説。
松前藩支配下での和人の横暴、虐待の対し、ついにクナシリのアイヌの不満が爆発する。
メナシのアイヌもこれに応じて、クナシリ・メナシで70余人の和人が殺害される。
蜂起の報せを受け、松前藩は総勢260余人(鉄砲85挺)の征討軍を編成し、 根室半島東端近くの野付嶋(ノッカマップ)に向かう。
降伏しなければ、クナシリアイヌは根絶やしにされるという
酋長の説得を受けて、蜂起したアイヌは武器を捨てて投降。
蜂起の指導者および直接和人を殺した37人のアイヌが処刑された。
新谷 行著の『アイヌ民族抵抗史』(三一書房)と読み比べてみて、
本書がおおむね史実に基づき書かれた小説であることが分かるが、
物語終盤の、変貌したハルナフリの「凍てついた溟(くら)い旅」は、
物語の本質にとって、余計な創作であると私には思えるが、いかがなものだろう。
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◎8/26(月)
民俗学者の谷川健一氏、24日、死去。92歳。
先週、蛇好きの友人から「唐松山天日宮 」がおもしろかったとメールをもらった。
読み手の感想をもらうことは皆無なので、小さな反応であってもうれしいものだ。
◆『 鹿島神宮 』東 実(鹿島神宮の元宮司) 學生社 を読む
先週で東北の旅の更新を終えた。今週より6月に訪ねた鹿島・香取神宮のお勉強。
◆『 蝦夷地別件(上)』船戸与一 小学館文庫 を読む
だいぶ昔、友人に勧められ『砂のクロニクル』を読んだが、私の好みではなかった。
今回は、『コシャマイン記』『天明の密偵』につづく蝦夷地モノということで、
再チャレンジ。しかし長い、中・下巻まである。
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◎8/19(月)
岩手県奥州市「 源休館跡 」をアップ。
◆『 天明の密偵 小説 菅江真澄 』中津文彦 PHP文芸文庫 を読む
今春訪ねた「志賀理和気神社」や「御座石神社」などなど、
東北を旅するとしばしば菅江真澄の足跡と出会う。
真澄 の「遊覧記」を読みつつ、なぜこれほど長い旅を淡々として続けられたのか。
そのモチベーションと金銭面の算段はどうしていたのか。かねてより疑問に思っていた。
本小説では、松平定信派の密偵という設定になっているが、その役回りを忘れても、
当時の交通事情や時代背景が克明に記されているので、旅する真澄の姿を想像できる。
東北の作家・中津文彦ならではの作品といえる。
昨年4月に亡くなられたことが惜しまれる。享年70歳。
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◎8/12(月)猛暑日つづく
先週9日、東北地方を襲った「これまでに経験のないような大雨」。
先日紹介した「明神さま(青龍大権現)」(仙北市田沢湖)や
「志賀理和気神社の赤石さん」(岩手県紫波町)などの地方に大きな被害をもたらす。
考古学者の森浩一氏、6日心不全のため没。85歳。
◆『義経はどこへ消えた? 北行説の謎に迫る』中津文彦 PHP研究所 を読む
◆『猿猴』田中啓文 講談社文庫 を読む
聖徳太子の「未来記」にそそられて読み始めたが、
中身はUMAや地球空洞説などトンデモ系のオンパレード。いやはや……。
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◎8/5(月)
秋田県大仙市「唐松山天日宮 」をアップ
◆『秋田「物部文書」伝承』進藤孝一 無明舎出版 を読む
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◎7/28(日)
先週、書籍「巨石巡礼」の担当編集者が逝去されたとの悲報を受ける。
3月より闘病生活に入り、復帰を願っていたが今月になり急に悪化したとのこと。
いつも細やかな心配りで接していただき、仕事においても一方ならぬお世話になった。
私より一回りも若かっただけに、返す返すも残念であり口惜しい。
ご冥福をお祈りする。 合掌
◆『恋路吟行』泡坂妻夫 集英社文庫 を読む
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◎7/22(月)
秋田県仙北市「明神さま(青龍大権現) 」をアップ
◆『コシャマイン記・ベロニカ物語』鶴田知也作品集 講談社文芸文庫 を読む
まったく知らない作家だったが、
阿刀田高の『続 ものがたり風土記』を読み、興味をもった。
アイヌの精神と歴史を描破した名作である。
21日、参院選。自公予想通りの勝ちを取るが、山本太郎の65万票は快挙といえる。
高橋たか子、12日心不全のため没。81歳。
若い頃にハマり、新作の出るたびに本屋に向かった時期がある。
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◎7/16(火)
秋田県田沢湖の「御座石神社の鏡石 」をアップ
◆『怒る富士〈下〉』新田次郎 文春文庫 を読む
富士山の宝永噴火は、完全な復興に36年間を要する大災害だった。
幕府は全国から復興救恤金を徴収し、40万両を超える救恤金を集めるが、
この金が、そのまま飢えに苦しむ被災農民に回ることはなかった。
救恤金は一般会計に組み込まれ、大奥の改築費に17万両が使われる。
火山灰の覆われた59の村は、復興の見込みがない亡所に指定され
そこに暮らす3万人の農民は幕府から見捨てられてしまう。
300年前の話だが、東北でのでたらめな復興費の使われ方等、 現在と重なる部分も多い。遅々として進まぬ東北の復興を考えれば、
世界遺産登録ばかりに浮かれている場合でないと、怒る富士が教えてくれる。
◆『東北・蝦夷の魂』高橋克彦 現代書館 を読む
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◎7/8(月)猛暑3日目
岩手県花巻市の「弘法大師霊場 」をアップ
◆『怒る富士〈上〉』新田次郎 文春文庫 を読む
宝永4(1707)年、突然大爆発を起こした富士山は16日間にわたり砂を降らし続け、 山麓農民に甚大な被害をもたらした。時の関東郡代伊奈半左衛門忠順は
こうした農民の窮状を救うべく強く幕府に援助を要請した。
だが、彼が見たものは被災農民を道具にした醜い政権争いだった?
時代は変われど、人間のやることは変わらないのですね。
◆『皆殺し』ローレンス・ブロック 二見文庫 を読む
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◎6/24(月)
岩手県花巻市の「呼石大明神 」をアップ
◆『東北の風土と歴史』高橋富雄 山川出版社 を読む
◆『ニセ札つかいの手記』武田泰淳異色短篇集 中公文庫 を読む
「めがね」「『ゴジラ』の来る夜」「空間の犯罪」「女の部屋」「白昼の通り魔」
「誰を方舟に残すか」「ニセ札つかいの手記」の7編を収録。
埋もれていた泰淳の傑作が文庫で読める。
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◎6/17(月)
岩手県盛岡市の「櫻山神社の烏帽子岩 」をアップ
◆『歴史のなかの大地動乱 奈良・平安の地震と天皇』保立道久 岩波新書 を読む
奈良・平安の世を襲った大地の動乱。
貞観津波、富士山噴火、東海・東南海地震、阿蘇山噴火……。
相次ぐ自然災害と、時の天皇の関わりを考察する。歴史学からの新しい試み。
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◎6/10(月)
岩手県紫波町の「志賀理和気神社の赤石さん 」をアップ
◆『徐福渡来伝説 移郷の人』岡本好古 徳間文庫 を読む
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◎6/3(月)
日曜日、石のアップを小休止して、
千葉県の香取神宮、茨城県の息栖神社、鹿島神宮、大洗磯前神社を探訪する。
鹿島神宮では、宝物殿にある悪路王(アテルイ)首像の三脚撮影に成功。
大洗磯前神社では、アニメキャラの絵馬がズラリと並んでいる。
どうやら、街おこしの一環であるらしい。アニメ大国ニッポンを実感する。

◎
写真家の坂本政十賜氏から、作品展の案内状とともに
『アサヒカメラ』6月号が送られてきた。
グラビア8ページで「東北」シリーズの新作が掲載されている。
同シリーズは2011年 2月号に続く2度目の登場となる。
今年4月に、新宿で写真展を開いていたが(私も見てきた)、
またもや、今月10日から「東北」シリーズの写真展を開催するとのこと。
妙なる美しさをもった東北地方の家、家、家……。
無数といえる民家のなかから、作者は、この家のどの部分に刮目したのか?
無機的な風景のなかに、その土地の風土、暮らしが隠されている。
感覚でみるのではなく、観察を強いる、昨今では稀な作品であると思う。
写真展については坂本政十賜のホームページから
◆『古代の日本 8東北』角川書店 を読む
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◎5/27(月)
宮城県大和町の「石神山精神社 」をアップ
日曜日、吉田東伍著『大日本地名辞書』の閲覧に近所の図書館に行くが休館日。がっかり。
◆『葬られた王朝 古代出雲の謎を解く』梅原 猛 新潮文庫 を読む
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◎5/20(月)
宮城県石巻市の「石神社の達磨石 」をアップ
◆『日本縦断アイヌ語地名散歩』大友幸男 三一書房 を読む
◆『流しびな殺人事件』島田一男 光文社文庫 を読む
出雲を舞台とした翡翠をめぐる考古学ミステリー。
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◎5/12(日)
◆『成吉思汗の秘密』高木彬光 角川文庫 を読む
源義経は平泉を脱出し、海を渡ってジンギスカンになった?
というトンデモ説を大マジメに論証していく歴史小説の傑作。
今回の東北の旅で、義経北行伝説にまつわる「源休館」(奥州市江刺区)という
場所を訪ねたゆえのおくればせの読書。
今週から巨石の更新に鋭意専心する。
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◎5/10(金)
白山桜、北館の桜、懸田の桜 を更新


秋田県美郷町、本堂城址のケヤキ(樹高32m、目通り幹囲9.3m、推定樹齢300年以上)前に
鎮座する「館間の鍾馗(しょうき)様」
悪鬼が集落内に入りこまないよう、大きな目玉をひんむいて睨みを利かせている。
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◎5/8(水)
岩手県の 龍谷寺、志賀理和気神社、東和町の桜 を更新

秋田県湯沢市岩崎地区の八幡神社に鎮座する人形道祖神「鹿島様」
鹿島様とは鹿島神宮の祭神、武御雷神(タケミカヅチノカミ)のこと。
武神、軍神であるといわれ、外部から侵入する疫病や災いを防いでくれる
塞(さい)の神である。高さは4mほどある。
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◎5/7(火)
宮城県の 文殊菩薩堂、貴船神社、曽根八幡神社、北郷早坂の桜 を更新
◆『朱の伝説 古代史の謎』邦光史郎 集英社 を読む
◆『トリック交響曲』泡坂妻夫 文春文庫 を読む
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◎5/1(水)
昨夜、東北の旅から無事帰還。走行距離は2220キロ。
ほぼ計画通りに走破できたが、
2日目(27日)に撮影したおよそ280枚のデータが破損するトラブルあり。
SDHCメモリーカードは購入したばかりの
「TDK Class10準拠 ハイスピードモデル/32GB」。
このカードは初日(26日)から使用していたが、
27日分だけが14枚を残して、破損(消滅)した。
Windowsパソコンでカードを見ると、文字バケしたレーベル名が並び、
開くことも、消去することもできない。Macで見るとデータは完全に消えている。
(当夜の落ち込みは半端ではなかった。)
大容量カードと「TDK」は絶対に使わないぞ。
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◎4/25(木)
桜前線、東北に入って小休止。
今夜、東北(宮城、山形、岩手、秋田)に向かう。
30日夜、帰路につく予定。
◆『日本人の魂』梅原 猛 光文社 を読む
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◎4/21(日)
◆『古事記を読みなおす』三浦佑之 ちくま新書 を読む
著者は、古事記の序文のみを偽書とみなし、序文は9世紀に、
本文は和銅5(712)年より数十年前の7世紀半ばから後半に成立したものと推考する。
『古事記』は『日本書紀』とはまったく異質な作品であり、律令国家の誕生以前から
列島に底流していた古層の語りとして『古事記』をとらえている。
しかし、日本の神話が書かれているのは『古事記』や『日本書紀』のみではない、
古層という点においては『出雲国風土記』や『先代旧事本紀』の神話伝承の
位置づけはどうなるのか、これも知りたいところである。
ついでながら、三浦佑之(すけゆき)氏は先週公開された話題の映画
『舟を編む』の原作者・三浦しをんの父である。
◆『中尊寺千二百年の真実』佐々木邦世 祥伝社黄金文庫 を読む
中尊寺の前執事長、中尊寺仏教文化研究所所長が記した平泉中尊寺の入門書。
若いときに一度訪ねたが、今年再訪してみたいと思っての下調べの読書。
◆『日本古代史と神々』上田正昭、直木孝次郎、上山春平、松前健、大林太良、横田健一
学生社 を読む
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◎4/14(日)
◆『楽しい古事記』阿刀田高 角川文庫 を読む
だいぶむかしに、阿刀田高のギリシャ神話、旧約聖書などの
「知っていますか」シリーズを読んだことがある。
内容はまったく思い出せないが、面白かったという記憶は残っている。
『楽しい古事記』は『ものがたり風土記』とほぼ同時期に書かれたもののようだ。
わざわざ現地に足を運んでも、入手できる情報はたいしたものではないと分かっていても
「とにかく現場に立ってみる。それが重要だ。」という
取材者魂は共通しており、好感がもてる。
これから古事記を読んでみようと思う人には、最適の入門書となるだろう。
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◎4/7(日)
「田園りぶらりあ」での話し──
腰の少し曲がった、80歳をとうに過ぎていると思われる
おばあちゃんが店にあらわれる。
馴染みの客であるらしい。
「おや、久しぶりですね?」
「もう、わたしのこと死んでるで思ってたでしょう」と、おばあちゃん。
ついで「モーム置いてない。若い頃に読んだけど、忘れちゃってまた読みたくなったの」
店主、書棚を探しはじめる。
「あったよ。ほかにもあると思うから探しておくよ」
「また来るから、ついでにモーパッサンも探しておいて」といって、
『月と六ペンス』(新潮文庫)を手に帰っていった。
蛇足だが、『月と六ペンス』は画家ゴーギャンをモデルにした長編小説。
家に帰り思う。
おばあちゃん、モームを最初に読んだのは何年前だったのだろう。
80を過ぎて、私は何を読み返したいと思うのだろう。
◆『続 ものがたり風土記』阿刀田高 集英社文庫 を読む
先月、面白く読んだ『ものがたり風土記』の続編。
旅の舞台は岩手、東京、徳島、北海道、広島。
今回は近現代文学にまつわる語りが多い。
なかでも読んでみたいと思ったのが、鶴田知也の『コシャマイン記』。
和人によるアイヌ民族迫害の歴史を題材にした小説で、第3回芥川賞受賞作。
阿刀田高の博覧強記もさることながら、旅先での現場検証さながらの鋭い分析、
紀行本にはない労作であると思う。
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◎3/31(日)
さくらの季節。今年は西に行きたいと思っていたが、
今年も仕事の都合で、4月中旬まで動けそうにない。
昨年と同じく東北になりそうな気配。
◆『新諸国奇譚』阿刀田高 講談社文庫 を読む
◆『『古事記』神話の謎を解く─かくされた裏面』西條 勉 中公新書 を読む
『古事記』神話が、古来から民間に伝わる神話をそのまま採録したのではなく、
新しく誕生した国家「日本」のために、新たに書きかえられた神話である──
『古事記』成立の謎を分かりやすく解説している。
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◎3/24(日)東京の桜見頃に


「東玉川地区会館」(世田谷区東玉川1-19-15)裏の公園にあるオオシマザクラ。
住宅地の中のあって、これだけ枝張りを広げたサクラもめずらしい。
◎
新しくなった東急東横線「渋谷駅」、歩く距離が長くなるのは承知していたが、
深い(不快)感はそれだけではなかった。
以前の櫛形ホームの開放感は望むべくもないが、
ホームが狭いだけでなく、地上に至るまでのエスカレーターや階段も狭い。
これでは災害時の人の流れを捌ききれるとは思えない。
利便性の先にあるのが、地下迷宮に漂うこの閉塞感か、
近未来の風景がますます暗くみえてくる。
◆『善光寺の謎』宮元健次 祥伝社黄金文庫 を読む
◆『聖徳太子 七の暗号』宮元健次 光文社新書 を読む
同じ著者によって書かれた「善光寺」と「聖徳太子(法隆寺」。この2つが
物部(もののべ)守屋の怨霊鎮魂というコードでつなっがっているという大胆な推論。
『善光寺の謎』は、本堂内陣の中央に峙立する「守屋柱」など、
私の知らないことも多くあり、興味深く読んだ。
続けて『聖徳太子 七の暗号』にも期待したが、
こちらはほとんどが『善光寺の謎』の焼き直し。同じ本を2度続けて読むのは、
最近のボケてきた頭には悪いことではないと思うが……。
『日本書紀』によれば、神武天皇が大和に入る以前、物部氏の祖・
饒速日命(にぎはやひのみこと)が、すでに大和を統治していたという。
しかし物部氏の出自はまったく不明、諸説入り乱れて混沌とした状態にある。
日本古代史のなかで物部氏の謎はことのほか大きく深い。
物部氏の謎は「善光寺」で止めておけばよかったのに、というのが私の感想。
◆『亜愛一郎の転倒』泡坂妻夫 創元推理文庫 を読む
軽妙洒脱な遊びごころが満載。
冗談半分から生まれたようなギリギリのトリックに思わず感歎してしまう。
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◎3/17(日)16日、東京でソメイヨシノ開花
金曜夜、東急東横線「渋谷駅」のホームを写真に収める人・カメラ・携帯でごった返している。
15日の最終列車で、およそ86年間続いたという地上ホームとおさらばし、
16日から、相互直通運転がはじまる副都心線の渋谷駅ホームに移される。
私にとっては、歩く距離が数百メートル長くなるだけの迷惑な話しだが、
月曜日から否応なし、「渋谷ヒカリエ」の地下5階まで連れて行かれる。
◆『私の古生物誌─未知の世界』吉田健一 ちくま文庫 を読む
「最後の文士」といわれる吉田健一に、こんな変わりダネの著作があるとは知らなかった。
ネス湖の怪獣ネッシー、雪男、怪鳥ロック、マンモス、さらには消えた民族や大陸まで、
トンデモ本に出てきそうな不思議な未知の生物を総覧できる。
昭和36〜39年にわたって書かれたもので、参考文献はほとんどが海外のものばかり、
さすがケンブリッジ大で学んだマルチリンガルな博覧強記ぶりがうかがえる。
吉田健一といえば、G・K・チェスタトンの『木曜の男』の翻訳者であり、
創作では『奇怪な話』という怪談とも幻想小説ともつかぬ摩訶不思議な傑作短編集がある。
本書を読んで、吉田健一の奇想天外なスケールはますますふくらんでいく。
◆『ものがたり風土記』阿刀田高 集英社文庫 を読む
日本各地の「ものがたり」の舞台を訪ねる紀行ものだが、これが一向に紀行本らしくない。
古史古伝から伝説、昔ばなし 、民間伝承、近現代の小説までと話しは他岐にわたり
どこに向かって行くのか、まるで捉えどころがない。
しかし、これがめっぽう面白く、ためになるのだからすごい。
続編もあるので、楽しみとしたい。
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◎3/10(日)週末は初夏の陽気に
◆『おさん』山本周五郎 新潮文庫 を再読
すでに古いネと云われそうだが、私の好きな大衆小説といえば、
山田風太郎、松本清張、山本周五郎の三人で、馴染みとなった心やすさから、
年に1〜2度、無性に読みたくなる。
『おさん』に収録されている「その木戸を通って」は、
大衆文学には珍しい、不思議な光彩を放つ怪異譚である。
ある日、さむらい平松正四郎のところへ、記憶を失った娘が訪ねてくる。
自分の名前も、なぜ正四郎を訪ねてきたのかも定かではない。
不憫ゆえ追い出すわけにもいかず、
正四郎の家扶夫婦に「ふさ」と名づけられ、そのまま家に居ついてしまう。
このため正四郎の婚約は破談となるが、のちに嫁として迎え入れ、子をもうけた。
平穏な日々のなかで、ふさの失われた記憶が断片的によみがえってくる。
夢裡の中にあるふさがつぶやいた「笹の道の、そこに木戸があって、……」
正四郎は、ふさが記憶を取り戻すことで、いまの幸福な生活が壊れていく不吉な予感を抱く。
3年後のある日、庭で子どもと遊んでいたふさが、忽然と姿を消してしまう。
方々手を尽くし行方を捜してみるが、ふさはみつからない。
正四郎は、来たときと同じように、行ってしまったふさに向かって
「帰るまでまっているよ」と静かに囁く。いつかは必ず思いだして帰るだろう。──
最後に一縷の望みを託すところが、幻想小説と異なる周五郎の人情世界である。
蛇足だが、先月だったかテレビで観た映画
「パンズ・ラビリンス」(2007/監督:ギレルモ・デル・トロ〈メキシコ〉)に、
主人公の少女が、迷宮の番人〈パン〉からもらった白いチョークで
壁にドアを描くと、そこが異界への入口になるシーンがあった。
この周五郎版「竹取物語」ともいえる『その木戸を通って』、
市川崑監督が映画化しているが、まだ観ていない。
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◎3/3(日)1日、春一番が吹く
先週の新聞に「軌跡の一本松 実は173歳」という記事あり。
大津波に耐えた岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」の樹齢は、
地元では樹齢270年前後とみられていたが、伝承よりも約100年若い
173年だったことが 伐採された幹の年輪から鑑定からわかった。
桜巨木の伝承樹齢も、だいたいこんなものと思っていいだろう。
◆『偽書「東日流外三郡誌」事件』斉藤光政 新人物文庫 を読む
戦後最大の「偽書」はいかにしてうまれたのか。
地元青森県の東奥日報の記者が綴った真偽論争の顛末記。
『東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)』については、岩手県花巻市の「丹内山神社」で、
「アラハバキという耳慣れない神の名を一躍有名にしたのが『東日流外三郡誌』という
奇怪な古代文書だ。昭和22年、青森県の和田喜八郎氏の自宅改装中に天井裏から発見されるや、
本物説偽作説が入り乱れ大論争となった。現在、判定は偽作説にほぼ固まっているが、
そこに描かれた古代津軽の荒吐(あらははぎ)族と大和朝廷の抗争の歴史は、
真贋を超えた面白さがある。」
と、まるで人ごとのような記事を書いたが、
こうした無造作な表現は戒めねばと、本書を読んでいたく反省する。
現首相の安倍晋三と両親の晋太郎夫妻が、わが家のルーツは安倍宗任(むねとう)の
末裔と信じて、宗任の墓があるという『東日流外三郡誌』の聖地
石搭山の荒覇吐神社を訪ね、擁護派の広告塔として利用された。
これなどは笑ってすませるが、偽書に関わり実質的な被害を被った
地域住民や関係自治体にとっては、東北のロマン云々どころではなかったのだろう。
読みすすむにつれ、虚妄と駆け引きのうそ寒い無明世界に閉じ込められたような徒労感、
あと味の悪さが残った。
◆『煙の殺意』泡坂妻夫 創元推理文庫 を読む
直木賞候補の「椛山訪雪図」「狐の面」を収めた8篇からなる傑作名品集。
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◎2/24(日)晴天
◆『
淫女と豪傑 - 武田泰淳中国小説集 』武田泰淳 中公文庫 を読む
電車の中で読み始めたが、冒頭「女賊の哲学」から、ただ事ならぬ妖気が漂ってくる。
電車で読むにはもったいない。あらためて、重厚、骨太の泰淳の世界に感嘆する。
冷酷無比の女を描いた「女賊の哲学」、蛇の化身である「人間以外の女」、
詩情あふれる「廬州風景」、清朝最後の皇帝溥儀の妻を写す「うつし絵」、
戦犯・漢奸のその後を辿る「獣の徴章」、中国三大悪女の呂后の「女帝遺書」、
興安嶺を縦走する調査隊「興安嶺の支配者」、歓喜仏となった絶世の美女「烈女」。
中国の古典に精通した泰淳ならではの短編8篇。どれもが傑作に値する。
◆『日本人の魂の原郷 沖縄久高島』比嘉康雄 集英社新書 を再読
著者は沖縄を代表する写真家で、1975年から80年代中頃までに
久高島に100回以上通い本書を書き上げている。
久高島で行われる12年に1度の秘祭「イザイホー」は、
かつて読んだ岡本太郎の『沖縄文化論 忘れられた日本』(1972)で知った。
久高島では太古から連綿と続けてきた風葬がおこなわれていたが、
1966年のイザイホーを取材した岡本太郎は、この風葬の地「グゥソー」に入リ、
風葬途中の木棺のふたを開けて、死者の写真を撮り、その写真を雑誌に掲載した。
この出来事は、島の人々にとっては衝撃的な事件であり、
この事件以後、久高島での風葬はとだえてしまったという。
比嘉康雄の取材は、岡本太郎のような強引なものではない。
神女ノロの西銘シズさんから息子のように信頼され、
久高島祭祀の記録作成を依頼され、78年の「イザイホー」を詳細に伝えている。
78年以来、500年続いた「イザイホー」は新たな神女が不在のため行われていない。
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◎2/17(日)晴天
録画していたBSプレミアム『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』小津安二郎監督を見る。
ほのぼのとしたノンセンス喜劇のなかにサラリーマン社会の悲哀が描かれている。
今から81年前、1932 年(昭和7)につくられた、
チャップリンやキートン作品に劣らぬサイレント映画の傑作。
◎
録画していたEテレアーカイブス「写真家・東松照明」を見る。
昨年12月に亡くなった東松照明の追悼番組。
東松氏が被爆二世の浦川志津香さんのアパートを訪ねるシーン。
玄関先で「トーマスで〜す」。
「は〜い」と出てきた志津香さんとの出会い頭を狙って、
パチパチパチと挨拶がわりのシャッターが切る。
撮られる志津香さんも心得たもの。硬くなるでもなく、いつも通りの日常を装っている。
奇矯な出合いのシーンだが、東松照明にはこれが自然体なのだろう。
人であれモノであれ、ありとあらゆるものの前に、ツッと近寄り、スッと撮る。
気取らない、飾らない。肩の力を抜いた好々爺の体でやさしくシャッターを押しているが、
プリントされた写真を見て、森羅万象を鋭くえぐる冷徹な目がそこにあることに驚かされる。
ドキュメンタリー番組としても一級品で、二人を捉えるカメラワークは見事。
◎
13日、「箸墓古墳など立ち入り許可 宮内庁方針」のニュースあり。
今月20日に奈良県天理市の「西殿塚古墳」と併せて、研究者の立ち入り調査を認めるという。
「西殿塚古墳」も「箸墓古墳」と同じ、宮山型特殊器台が採集されている。
発掘や土器などの採取はできないが、新たな知見が得られるかも。
◆『神の銃弾』ボストン・テラン 文春文庫 を読む
『音もなく少女は』のボストン・テランのデビュー作。
才能の片鱗は見えるが、力み過ぎた過剰な比喩に閉口する。
◆『東日流(つがる)妖異変』篠田真由美 祥伝社文庫 を読む
「東日流外三郡誌 」「大石神ピラミッド」「荒覇吐(アラハバキ)」の名が出てくるので、
津軽を舞台にした伝奇小説と思いきや、まったくの空振り。
物語りの軸となる歴史的考証はかけらもなし。
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◎2/10(日)晴天

3連休、母の一周忌法要で広島に帰る。

父と母の墓がある比治山の長性院(ちょうしょういん)鐘楼門に立つ仁王像。
父(享年84歳)が亡くなった平成9年に、本堂脇の仮工房で制作されていたことが記憶にある。
被爆にあった樹齢300年の楠の大木を用いて、
広島在住の仏師・中西平三氏の手により平成10年に造立したという。
◆『あづま みちのくの古仏』吉村貞司 六興出版 を再読
◆『蠅の王 』ウィリアム・ゴールディング 新潮文庫 往復の新幹線で読了
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◎2/3(日)立春の候 晴天
◆『失われた日本を求めて』谷川健一 青土社 を再読
大正10年生、今年で92歳を迎えられるが、まだまだ達者でいてほしい。
◆『
音もなく少女は 』ボストン・テラン 文春文庫 を読む
翻訳はローレンス・ブロックの田口俊樹。それだけで買ってみたが、これが大当たり。
明晰、重厚、かつ崇高な文体は、聾者の少女イヴの持つ
ライカM2+ズミクロン50mmのレンズを通して写し出されよう。
ミステリーの枠を超えた秀作と思う。
◆『密林の骨』アーロン・エルキンズ ハヤカワ・ミステリ文庫 を読む
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◎1/27(日)晴天
アルジェリア人質事件で日本人10人死亡。
9・11以降、日本人もテロの標的となっていることを思い知るべし。
◆『
一四一七年、その一冊がすべてを変えた 』スティーヴン・グリーンブラット 柏書房 を読む
久しぶりに読むルネサンスもの。かつてハマった時期があり懐かしい。
タイトルのすべてを変えた「その一冊」とは、
古代ローマの哲学者ルクレティウス(BC99頃〜BC55)によって著された
壮大な叙事詩『物の本質について』のこと。
原子論、快楽主義を説いた古代ギリシアの哲学者エピクロス(BC341頃〜BC270頃)の
教説を元にしたもので、神の摂理、死後の世界を否定したことから、
中世キリスト世界から異端視され、忘却されていた書物であった。
ルネサンス黎明期の「一四一七年」、千数百年以上の時を経て『物の本質について』が
一人のブックハンターによって再発見される。
発見者は、ローマ教皇庁の元秘書官であり、各地へ旅行し古代の写本を研究していた
人文主義者ポッジョ・ブラッチョリー(1380〜1459)。
今から2000年以上前の書物をめぐる長大な歴史物語がはじまる。
ドイツの美術史家・パノフスキー(1892〜1968)が、
名著『ルネサンスの春』(思索社/1973)のなかで、
ルクレティウスとポッジョ・ブラッチョリーの出会いについて記している。
「ルクレティウスの『ものの本性について』はキリスト教の教父たちによって
見さかいなく利用されまた激しく攻撃もされたが、中世後期には
完全に忘れられていたのでダンテでさえそれを言及していなかったが、
ポッジョ・ブラッチョリーニによって「再発見され」、早くも一四七三年から印刷されていた。
しかしこの再発見─自然哲学、科学、詩にとっては根本的な重要性をもつ─は、
一四〇〇年代の最後になるまで、美術のうえには何の影響も与えなかった。」
ルネサンス期のなかで、華々しく復活したのはご存じプラトン哲学であった。
ルクレティウスの唯物論的自然哲学が、ボッティチェリ(1445〜1510)の
『プリマヴェーラ(春)』に、決定的な影響を与えたという解釈もあるが、
プラトン、アリストテレスほどにはメジャーな存在ではない。
同様にポッジョ・ブラッチョリーも、ブックハンターの先駆者ペトラルカ(1304〜1374)
ほどには重要人物とは考えられていない。
本書の面白さは、これまでのルネサンス史のなかで埋もれていた、
ポッジョ・ブラッチョリーの「再発見」を、作者が「再々発見」し、
ルクレティウスの多神教的哲学こそが、ルネサンスの巨人たちに霊感をあたえ、
異端者として火刑に処せられたブルーノ(1548〜1600)、
宗教裁判に付されたガリレオ・ガリレイ(1564〜1642)、ニュートン(1642〜1727)、
20世紀の至ってはアインシュタイン(1879〜1955)までにも影響を与えたという
壮大な仮説にある。これからのルネサンス研究に一石を投じる名著となるのか。
2012年のピュリッツァー賞受賞作。
◆『蚊取湖殺人事件』泡坂妻夫 光文社文庫 を読む
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◎1/20(日)晴天
15日に大島渚死去のニュース。享年80歳。
◆『泥棒はクローゼットのなか』ローレンス・ブロック ハヤカワ・ミステリ文庫 を読む
◆『ハルモニア』篠田節子 文春文庫 を読む
◆『花火と銃声』泡坂妻夫 講談社文庫 を読む
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◎1/14(成人の日)初雪
写真家・東松照明が、昨年12月14日に亡くなっていた。享年82歳。
『太陽の鉛筆』(1975)以来のファンであり『さくら・桜・サクラ』には特別の思いがある。
◆『冥土の神々たちー奥利根の石仏』朝日新聞前橋支局 煥乎堂 を読む
美しいモノクロ写真に惹かれて今月4日に「田園りぶらりあ」で購入した。
こんな希少本が500円で入手できるのだからありがたい。
◆『捕虫網の円光ー標本商ル・ムールトとその時代』奥本大三郎 中公文庫 を読む
虫屋が綴る虫屋の評伝。
仏領ギアナでの採集は、マックイーンの映画『パピヨン』の時代と重なる。冒険譚としてもおもしろい。
◆『泡亭の一夜』泡坂妻夫 新潮文庫 を読む
珠玉の創作落語集。
◆『冬を怖れた女』ローレンス・ブロック 二見文庫 を読む
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◎1/7(月)晴天

奥沢神社(世田谷区)に初詣。鳥居に厄除けの大蛇が絡まっている。
今年は巳年ということで例年よりも参拝者が多い。
●『BIUTIFUL ビューティフル』(2011/監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ)
主演は『ノーカントリー』のハビエル・バルデム。
●『ゴーストライター』(2010/監督:ロマン・ポランスキー)
●『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2011/監督:スティーブン・ダルドリー)
●『ミルク』(2008/監督:ガス・ヴァン・サント)
●『デンデラ』(2011/監督:天願大介) を観る。
柳田国男『遠野物語拾遺』に、昔、六十歳になるとデンデラ野に棄てられたという
棄老伝説の話しがある。タイトルは、ここから取られたものだろう。
先月、吉村昭『羆嵐』を読んだこともあり、クマとの死闘シーンに魅せられる。
『楢山節考』の続編(?)を、今村昌平の息子が撮ったというのも好ましい。
◆『共生のフォークロア 民俗の環境思想』野本寛一 青土社 を読む
◆『古代の鏡と東アジア』金関恕・新井宏・菅谷文則・福永伸哉・森下章司 学生社 を読む
◆『出雲大社』千家尊統 学生社 を再読
◆『贋物漫遊記』種村季弘 ちくま文庫 を再読
◆『ウォッチャーズ』〈上〉ディーン・R・クーンツ 文春文庫 を読む
◆『ウォッチャーズ』〈下〉ディーン・R・クーンツ 文春文庫 を読む
◆『蜘蛛の巣のなかへ』トマス・H・クック 文春文庫 を読む
◆『倒錯の舞踏』ローレンス・ブロック 二見文庫 を読む

「釣石神社」宮城県石巻市
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